銀杏の実


毎週火曜は治療日。
に加え、今回は先週のPETの結果を聞く日。
いつになく重い気持ちで病院へ。でも、以前のように、まるで判決を待つ囚人のような気持ちはあまりなくなってきたみたいな気がする。
私も、少しは悟って来たのかな……というより、がんを抱えて生きることに慣れて来たのかな…
採血がなかったので、遅く行ったわりには早く呼ばれた。診察室に入る…やいなや、主治医の表情で、ピィーン!ときた。
「再発ですね。どこですか?」
考察としては
縦隔リンパ節。胸骨Th10付近、仙骨左側に集積を認める。
とあった。右下腹部皮膚に集積を認める。ともあったが、それは多分、三ヶ月に一度接種しているリュープリンが、カプセル状になっているものだと思う。と主治医に伝えると、 そうでしょうね。とのことだった。
今回の検査は、右肩から腕にかけての痛みが続いており、その原因を確定するために、骨シンチを、とも思ったのだけれど、他の部位も診れたほうがよいからと行なったPETだった。もしかして頸椎か、肩かな…と覚悟はしてたのだが全然違う部位で、愕然とした。 がん告知や、再発告知で、「頭が真っ白になった」とか、「パニックになった」という話をよく耳にするが、私はいつも、がんである自分を別の自分が見ている錯覚にかられる。「あぁ…そうなんだ…」と、何故か白々とした気分になるのだ。そして、時々涙が浮かんでくるも、今後の治療のことなど、主治医と話す。
がしかし。夜、長男からすぐに見破られた。「なんか、あったの?」
「え?なんで?」
「なんか泣いたような顔してるから」
「ちょっといろいろあって…でも大丈夫。ありがとうね」としか言えなかった。それ以上は何も聞いて来なかったが、毎晩肩を揉んでくれるのだけど、昨夜はいつになく、ずっとずっと揉んでくれるのだった。
「また抗がん剤はじめるの?」
放射線になるのか、化学療法になるか、まだわかんない。MRI撮ってからしか。でも、放射線だと、タキサン系の抗がん剤を併用すると思うから、そうなるとまた脱毛する…」
「短く切ればいいじゃん」夫との話はこれだけ……妻が再再再発。どう感じたのかな…。前向きなことをフッと言ってくれる夫。こうなるとなんと言ってよいのやらわかんないのかもね。「治療するしかないんじゃない」と思ってるんだろうけど。
再再再発告知の後も、家に帰れば普通に家事もしなければならないわけで。泣く間もなく、一晩が過ぎた。
でも、今朝、次男を送った後、必死に耐えていた何かがプチッと切れ、神社にお参りしながら、涙が溢れて来た。とめどなく……
うん。よし。これでいい。泣くのも疲れるが、涙をこらえるのはもっと疲れる。
泣くだけ泣くことも大切! そしてこうして今日一日を生ききる!
転移をしらせた友人たちから即行メールがかえされました。
「愛しいあなた自身のそのからだ
愛しい子供達のお母さんであるそのからだ、
私の大切な大切な友達であるそのからだ、今、考えられるベストな選択が出来て、一番いいように向かいますように。ちゃあんとそうなりますように。ちゃあんと必ずそうなりますように。
きっと絶対だいじょうぶなのだ!」

「がんばろう。なにが起こっても、一緒にがんばろう」

「転移も含めて、早めにいろいろわかるのは
情報として大事なこと。徹底的に敵の
居場所を調べあげて作戦練ろう!」

凄いね、メールは。
アナログ人間な私も、こんな時は、つくづく 凄いなァ…今の時代は。と思うのでした。
ありがとう…ほんとうにありがとう…。

昨日、呆然として次男を迎えに行ったら、メールをくれた一人の友人が、学校にいて、箱一杯の銀杏の実をお母さん達にわけてあげてた。
「実家から山のように送って来たと。みんなにもらってもらおうと思ってさ〜。つって、あなたの顔を見に来たと!」と笑ってくれた彼女の目は、涙でうるうるだった。

ありがとう…私はしあわせもんです(泣)