医師のひとこと と お兄さんのひとこと


K大二度目の受診日。
今日はCTの予約が9:40に入っていた為、9時前に家を出た。検査の2、30分前には着いてないといけないからだ。
何時もの如く、造影剤付き。何度やってもこの検査は嫌だ。しかもここで検査するのは初めて。慣れないところはいろいろと大変…。案の定、造影剤を注入する為のルート確保する時、若い看護師さんが、手の甲に針を刺すと言う。
……え?ちょっと待ってょ…造影剤の注射ってただでさえ滅茶苦茶痛いのに手の甲って…
それより……と言う間も無く、親指の付け根あたりの手首にブスッと刺された。
いっ、痛いーーー!そこは骨と皮しかないぢゃ〜ん!(泣)押したり引いたりした後、
「……?すみません、入りませんでした。やり直します。」
ほらね。やっぱり始めに言えばよかった。
両腕をバンザイしたような形で撮影するので、採血の時の肘の内側は曲がるのでダメらしい。失敗した手首が青ざめて腫れ、うっ血して来た。
「あの、いつも手首より少し上に刺してるので、その辺からしてもらえますか?」
「あー、分かりました。」すると、今度はすぐに成功した。
やっぱり始めにきちんと言うべきだった。
何度もやって来た検査は自分が一番分かっているのに。
私は採血や注射など、血圧を測る時ですら右手しか使えない。左はリンパ節を切除している為、ちょっとした傷口でも細菌感染すると、蜂窩織炎を起こしてしまいかねない。
右手ばかり使うので、血管が出にくくなって来てるのかも…。
もっと慎重に扱ってほしいよなぁ…。
そして、診察…。
結果を聴くのが恐ろしかった。
もう何度この思いを味わったことか。
中待合いの椅子に座り、その思いをかき消すかのように、ブックスタンドにあった医療用ウィッグのカタログをぼ〜っと見てると、名前を呼ばれた。
中に入り、挨拶をして椅子に座る。
CTの結果はまだだった。次回の受診日に話すと言う。
また待つのか…。
今日はハーセプチンだけ点滴することになった。
で、ずっと気になっていた事を聴いてみた。
ハーセプチンは間がちょっと空いた時も含めると、もう四年前から投与してるのですが…。今回も、ハーセプチンとナベルビンをやってて再発したんですけど…それでもハーセプチンはするべきなのでしょうか?」すると、医師は私の言葉を遮るように言った。
ハーセプチンは続けます。その方が、生存期間が長いというデータが出てるんです。」
「あ、そうですか…解りました。」としか言えなかった。それより何より「生存期間」という言葉にドキッとした。
医師は、間違った事を言っているのではないだろう。私だって、可能性が高いことはやるに決まっている。でも、改めて自分が薬なしでは生きられないという事実を突き付けられた気がした。
それから心の何処かにずっとそのひとことが居座り、払拭出来ないのだった。
忘れなければ…。
自分にとって、プラスにならない思いには蓋をしないと、これから命をかけて二人三脚しなければならない医師との間にわだかまりが出来ることにもなる。
それだけは避けなければならない。
ハーセプチンに、抗がん剤を上乗せするかどうかはCTの結果次第ということになった。
また来週までお預けだ。
そしてケモ室へと向かう。(Cemotherapy=化学療法)
前の病院は、ケモ室のベッドは6床。
ここはまあ、一体、何床あるのでしょう?というくらい広かった。しかも、全部患者でいっぱいだった。
看護師さんたちも、バタバタと忙しそう…。以前は、看護師さんともいろいろ話をしたが、ここでは有り得ないようだ。
まぁ、これも仕方ない。
ハーセプチン投与に一時間半。
終わるやいなや、さっさと帰って来た。
といっても、朝、9時前に出て、もうすぐ次男のお迎えの時間になっていた。
病院の日は一日がかりだ。



帰りに、桜子ちゃんママオススメのお肉屋さんで、手作りハンバーグを買う。
大っきくて柔らかくて絶品!
ハンバーグ作りは娘もたまに手伝ってくれるのだけど、今日は間に合いそうにない。
ここのお店は、家族で営んである。
多分息子さんであろうお兄さんに、
「ハンバーグ5個下さい」と告げると、
「ありがとうございます、ハンバーグ、たった今、仕込んだとこなんですょ!」
「ホントに?!ラッキー!」と言うと、
「 日頃の行いがいぃんですね(笑)」そして、ちっちゃいハンバーグを「これはオマケです」ってつけてくれた。
ありがとう〜、お兄さん(泣)
お弁当用に出来るではないか!
なんか、心が和んだ。
これだからこぢんまりしたお店って好きなのです。
お店の人と会話出来るって、素敵じゃないですか。
言葉を交わすことで、気持ちがやんわりなって、また来たい!って思う。
スーパーじゃこうはいきませんものね。



それから神社でお参りして次男のお迎えへ…。
そして気付くと………
……ん?ずっと胸に引っかかってた医師の言葉はどっかに飛んでっちゃってました〜。
お肉屋のお兄さん、貴方のおかげです。
今日のスペシャル、Nice Guyは紛れも無く貴方です〜!
もちろんハンバーグは、最高の味でした!




ありがとう、お兄さん。
今日は貴方に救われました。
また美味しいお肉買いに行くよ〜!

でわでわ…





ケモ室の無機質な天井。
こんな天井を見ながら死にたくはないなと思う…。




私を赦し、励ますかのように夕陽は美しく
西の空に沈んで行く……