静なる躍動感


昨年12月。
NY、カーネギーホールで行われた小澤征爾 氏のCDを聴いた。食道がん術後以来、交響曲の指揮は約一年ぶりという。
ブラ1は好きな曲だ。
絶望から歓喜へ……。見事に復活を果たされた、まさにBRAVO!な一枚でした。


クラシックのコンサートはいい。
LIVEのあの熱さも好きだけれど…。
何と言ったらいいだろう…。
あの凜とした緊張感漂う空気感…。
私の奥深くにある静なる何か…が揺さぶられ、心に響く感じ……。

昨年、五月には娘と、ウィーン交響楽団のコンサートに行った。ヴァイオリニスト、五嶋 龍 氏も登場。五嶋 氏はブラームスのヴァイオリン協奏曲ニ長調を…。
娘は、ベートーヴェン 交響曲第7番に大興奮!何と言ってもハマりまくった「のだめ」のテーマソングですから。(笑)
でも、理由なんてどうでもいいんです。
フルオケのあの「音」に触れただけでも。


BRAVO!と言えば…フジ子.ヘミングのリサイタルを思い出す。
彼女のコンサートには、いつも弟であるウルフが着いて来て、彼女が描いた絵やら葉書やらを売っている。
初めて彼を見た時は、ハーレー乗りのアメリカ人かと思った。(横浜にいた時、夫のハーレーでキャンプなんかに行くと、そんなアメリカ人がごまんといたからだ。)彼自身も役者らしいが、声がもの凄くいい。リサイタルの最後の曲が終わるやいなや、「BRAVO!!!」まるでオペラのテノールのような一声が響く。

確かに、彼女のコンサートは従来のクラシックコンサートとはちょっと異質だ。
もう10年程前だったか…
サントリーホールでウィーンカルテットとのコラボがあった。
客席からは楽章と楽章の合間に拍手したりで、本人たちもちょっと苦笑い。
私の前の座席のおば様三人組なんか、カルテットの演奏の時など、「か〜っ…」といびきをかいて熟睡。で、フジ子のカンパネラになると、「フジ子さ〜ん!」なんて叫ぶ。あれには驚いてしまった。
フジ子さんの弾くリストなら、「ため息」なんかもいいと思うんですけど…。みんな何でカンパネラばかり喜ぶのかなぁ…?
あのカンパネラの繊細な旋律にフジ子や自分自身の人生の哀しみを反映させてるのだろうか…。


フジ子の魅力はテクニックではない。彼女しか創り出せないあの独特な雰囲気にある。
まるで何処かへタイムスリップしたかのようなあの美しい異空間は、他のどんな有名なピアニストでも表現出来ないだろう。まさに、彼女だけの世界だ。(個性という表現は妥当ではない気がする)
私は、大好物はじゃが芋のおみおつけだとか、米粒一つ残すのも嫌だ、なんて言う彼女に、何だか熱い何かを感じてしまうのだ。
ウィーンのカフェにあったという古い椅子を自宅のリビングに置き、「これ…グスタフ・マーラーが座ってたかも知れないじゃない…」なんて空想してるところとか…。
そんなところが好き。
愛猫たちと暮らし、今でも公演の入場料の一部は動物愛護団体へ寄付されるという。
猫も人間も同じ命を持っている。
苦しい時を乗り越える事が出来たのは猫たちのおかげだと…。

この世で頑張ったことはみんな天国へ持って行ける。私は今、その準備をしている。と言う彼女。


彼女は私の母と同い年。そう考えると凄いじゃないですか!
いつまでもお元気で、あのオーラと独自性を貫いていただきたい。