折り合いをつける


昨日、今日と、病院ずくしの一日でした。
今日は毎週の治療であるハーセプチン投与。まぁ、いつも通り滞りなく…。機械的に淡々と終了。
でも、この薬のおかげで私は生きているのだ。
外来の椅子に座って本を読みながら待っていた時、ふと受付を見ると、「緩和ケア」のチラシが目に入った。



がんになったとき、
病気だけでなくいろいろな苦痛と闘わなければいけないとしたら…
痛みは、あなたの生きるエネルギーを奪います。
強い倦怠感は、もうなにもできないという無力感をまねきます。
吐き気は、あなたを一日中不愉快な気分にさせます。
気持ちの落ち込みは、あなたの力を奪います。
希望が見えないことは、あなたを絶望の淵に追いやります。
がんになったとき、
からだやこころの苦痛を和らげる医療があることを知っていますか。
緩和ケアは、がん医療を充実させる大切な医療。
苦痛が緩和されれば、おだやかな時間を取り戻せます。
遠慮せず、勇気を出して、言ってみましょう。
「緩和ケアを受けたいです」と。



チラシにはこう記してあった。
緩和ケアと聞くと、がんの終末期に受ける治療だと思う人も多いのではなかろうか。
でも、実際はそうではない。寧ろ、がんと診断された時から、治療と同時に並行してスタートすべきなのだと思う。自分ががんになり強く感じる思いなので、本当の事だ。
がんの治療自体は、だいたいエビデンスに基づく治療がなされる。しかし、壊れた機械をなおすのとは訳が違うのだ。少なからず、がんになったからには患者はがん自体の治療と同時に「死と向き合わねばならない」という課題が出て来る。
それまでは普通に生きて来たのに。
普通の日常があったのに。
いや、そもそも健康である人の日常の中では、あまりにも「死について」考える事自体が希薄になっている。そのことにこそ危機感を覚えねばならない事なのかも知れない。
人間、誰一人とて避けては通れない事なのだから。 しかも、それがいつ訪れるかは誰にもわからない。
しかし、私自身も、死というものは、歳をとり、あたかも花が枯れるみたいにやって来るのだろう…くらいにしか考えてなかったので、あなた、がんですよ。なんて言われても、そりゃあいきなり、目の前に黒い幕がストンと下ろされたような感覚…。
薬を飲めば治るという病気とは違うのだ。
普通、がんは手術や初期治療の後、五年再発しなければ、一応の治癒とみなされることが多いようだ。しかし、乳がんは違う。
10年、20年後に再発する人もいる。
乳がんに罹ると、一生、心の何処かには再発の恐怖があるだろう。そんな思いに耐えながら日々を生きて行かねばならないのだ。
ましてや再発となるとその重圧たるや……。言うなら、緩和ケアがきちんとなされないとがんの治療自体が困難になるかも知れないとさえ思う。


「自分自身の気持ちにどう折り合いをつけるのか。」
それが辛い治療を続けて行けるかどうかのキーポイントになる。


治療だけの事ではない。
患者は心の中を共有したいのだ。たとえ解決が困難な事であっても。
どんな選択をすべきなのか?
自分らしく、少しでもbetterな生き方をするにはどうすればいいのか?
そんな諸々をただ黙って聴いてくれ、「一緒に考えて行きましょう。あなたは独りではないのですよ。」と言ってくれる人が必要なのだ。
その内なる支えが、患者に希望をもたらす。
そして、生きることにも、死ぬことにも、前向きに考える事が出来るようになって来る。
ほんの少しずつ…。
だが一度は立ち直る事が出来ても、またドーンと真っ逆さま。それの繰り返しだ。
思うに、そうしていくうちに、徐々に、E・キュブラー・ロスの言うところの「受容」に達して行くのではないかと思う。(米の精神科医でもあるキューブラー・ロスは著者「死の瞬間」にて死に至る心理過程に五段階あることを示した。そして、いずれの過程にも希望があると書いている。
• 否認。 自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階
• 怒り。 なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階
• 取引。 なんとか死なずにすむように取引きをしようと試みる段階。何かにすがろうという心理状態
抑うつ。 なにもできなくなる状態
• 受容。 最終的に自分が死に行くことを受け入れる段階)



私は幸運なことに、齋藤先生や恵紙先生、篠崎先生もついていてくださっている。それが私の支えなのかも知れない。


昨日は、齋藤先生に診ていただきました。
右上腹部が張った感じがし、押さえると痛みもあるので、診察と、エコーもしていただきました。
私の肝臓…。腫瘍性のものは認識出来ないらしいが、私の体格から考えると、1.5倍位大きいと言われた。どうりで張った感じがする訳だ。今まであれだけの…主たる抗がん剤はほとんど使って来たのだ。悲鳴を上げないはずがない。
しかし、齋藤先生は、こう仰ってくださった。
「イメージ出来るだけで、やはりストレスは違って来るかと思います。あなたをしっかり支えて来た証としての肝臓の腫れですから、良い子!良い子!って思ってやって下さいな。」


私の肝臓…。頑張って!!!