岐路


1月10日・金曜日。
今年初めての治療日だった。
主治医に報告せねば…と思っていたこと。
副作用からの発熱、白血球減少、怠さに加え、年が明けてからまた急に鳩尾の張り感が増して来て目で見ても触ってもガチガチと硬くなっていること。
深呼吸、ため息、あくび、くしゃみをする時ですらあまりの張り感故うまく出来ないこと。
この感じ…。


「パージェタ+ハーセプチン+ドセ、もう効かなくなって来ている気がします」



そう言おうと思っていた。
でも、それは言うまでもなかった。
11月8日から開始したこの治療法。腫瘍マーカーも12月20日までは順調に下がっていたのだが、採血の結果はCEACA15-3の両方が上がっていた。


やっぱり…。


良い方に向かう時も、その逆の時もだが、身体と意識は繋がっていて、どんなに精密な検査よりも正確に自分自身で感じる事が出来るということを改めて思い知らされた。



「効いてないね」と主治医。
自分でもそう感じていた…、と最近の症状を報告する。
さて、となると次なる治療は?なのだが、有効と考えられる治療法は『無い』と。
まだ使ってないジェムザールはどうか?と聞くも、使ってみてもいいが期待は出来ないだろうと。
いちばん考えられるのは今の治療法に更にタイケルブを加えるという方法。
パージェタ+ハーセプチン+タイケルブ+ドセ。
分子標的治療薬のトリプル攻撃。欧米ではすでに行なわれているらしいが、勿論日本ではまだで、保険診療からは外れるらしい。それも効くかどうかは分からない。
再発したがん細胞は途切れ無く続く抗がん剤にやがては薬剤耐性がつき、更に変化して行く。はじめは一つの治療が長い間効いていても、だんだん効く期間が短くなって行く。
望みを託していたT-DM1が使えるようになる日は更に延び、まだまだ先のようだ。
「まだ若いし、我々もどうにかならないかとは思うが、現時点での治療法はもう無い」
みたいなニュアンスだった。
「このまま何らかの治療を行うか、緩和ケアにするのか。ご主人とも話し合ってください」
…って、…夫と何をどう話し合うというのか?
「お前の事なんだからお前が決めるしか無いんじゃない」
と言われるのは分かり切っている。

主治医に聞いてみた。
「積極的な治療を行なわず、所謂緩和ケアだけにしたら予後はどうなのでしょうか?」
「それは分から無い。でも、肝臓だし…早いだろうね」


これって余命宣告だよね。
不思議と何も感じ無かった。



とにかく、何もしないよりはいいからとパージェタ+ハーセプチン+ドセ4回目を投与することになり、マーカーだけで無く画像診断も必要という事で17日にCT予約を入れる。
分子標的治療薬トリプルを行うかどうかの決定はその結果を見てからになりそうだ。





そうか…
そうなんだ…




という気持ちのままケモ室へ行き、いつもと同じようにベッドで治療を受けながら作って持って来た弁当を食べた。



自分の命はあと僅かなのか?
どうにかして何らかの治療法を見つけなければ…!


わなわなとそう思うのが普通なのか?
でも、何だかぼーっとした意識の中で考えたのは


(今日も帰るの遅くなるなぁ…。帰りに買い物して帰らなくちゃ。すぐ出来るしゃぶしゃぶにしようかな…)



…だった。
私の中で、「生きる」という事の本当の意味が確実に変化している。
何となくだけど、でもハッキリとそう感じた。













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