真夜中の旅


昨夜、グレイが旅に出ました。
前にもお伝えしたと思いますけれど…。
グレイは肥満細胞種という病気になり、普段は玄関横のケージにいます。朝と夕方、また、トイレ掃除の都度、出してあげて、庭や近くをうろうろします。時間がある時はリードを着けてちょっと遠くまで。でも、やっぱり猫なんだもん。自由に歩きまわりたいみたいで…


グレイはずっとケージにいて幸せなんだろうか…?


長男は葛藤があるみたいです。
夫は、「仕方ないだろ。自由と引きかえに、一生食うに困らないことと、安息の寝ぐらがあるんだからな」と言う。
夕方は、次男のケアや、夕食作りで手が離せないので、いつも長男と娘がグレイのお世話をしている。昨日は、長男が友達の家から帰ったのが遅かったので、もう暗くなってからやってた。晩ご飯の支度が出来ても一向に来ないので、ピンと来た。


グレイがいなくなったから探してるんだな…


案の定、予感は当たりだった。
ほんのちょっと目をそらした一瞬の間に、見当たらなくなり、その後、どんなに探しても夜の闇がグレイを包んでしまい、もうあのソフトクリームみたいなしっぽをしたグレイの姿はどこにも無いのでした。
まだすぐそばにいるのに…
という思いが、長男の気を駆り立てた。
私たちがどうしてここまで神経質なほどにグレイを案ずるのか…?それはグレイの性格にある。グレイは一見、鰓が張っていて、目も強そうな光を放ち、いかにも雄の風貌なのだけど、とっても臆病で優しい性格なのだ。これまでも、何度も旅に出、その都度ボロボロになって、傷だらけで帰って来るのだった。
一度、庭で取っ組み合いをしているのを目撃したことがある。グレイの二倍はあろうでっかい猫だった。きっとこの辺りのボス猫だ。
グレイは病気で、潰瘍がある。そこをグサリとやられるのだ。

「仕方ないよな。それが雄猫の世界だからな…」と夫。

2時前にケージを見た時にはまだ帰ってなかった。無事に帰って来て……。
祈りながら眠りについた。
そして朝。
夫がケージを見に行くと、ケージの一番上のベッドで寝てたらしい。
少しして起きてから見ると、やっぱり。
顔には無数の傷があり目の上は腫れていた。背中の毛がごそっと抜け、お腹にも引っかき傷が。身体中砂ぼこりで…。
きっと取っ組み合いで戦ったんだ。
クリニックの先生から聴いたことがある。
「顔に傷があるということは、立ち向かったということですよ」
グレイ…。
また必死で立ち向かったんだね…。
お散歩中、車が通りかかっただけでもビク〜ッッとして立ち止まるグレイなのに。
グレイの大好きな膝抱っこをして、体をキレイに拭いてやり、傷を消毒し、薬を塗った。
ご飯を食べて、水もたっぷり飲んで、今はぐっすり眠っている。
怖くて痛い思いもしただろうけど…。
それでも旅は楽しかったのかな…?
起きたらまたいっぱいいっぱい抱っこしてあげよう…。


険しい表情もするけど、普段はくりんとした目で…
ジジにも似てる…
あたりまえか。きょうだいだもんね。