森羅万象

がん闘病も長くなって来ると、初めの頃とはまた違う思いや不安が出て来ます。
患者仲間と会話してると、みなさんいろんな思いをかかえておられます。
「そんなに悩むのなら先生に言えばいいのに」と思うのですが、年配の方になるにつれ、医師の前になると、貝のように口を閉ざしてしまわれる方もおられます。(患者がいろいろ言ったら先生が嫌がるんじゃなかろうか…。)という思いがあるようです。
でも、患者は主治医に自分の思いや考えをきちんと伝えねばなりません。
「医師が解ってくれない」というのは患者の驕りでもあると思います。とはいえ、なかなか言いにくい…というのが現状のようです。
先生方にも、どうか、患者が恐れる事なく、思いを打ち明けられる雰囲気を作り出していただけたらと思います。
私は病んでから、前向きな気持ちと、ものすごくネガティブな思いとが、繰り返し波のように押し寄せて来ます。マイナスな波が一度押し寄せると、なかなか引いてくれません。引いては押し寄せ、引いては押し寄せ…の繰り返しです。
夏にそれはピークを迎えました。主治医の前で、ぽろぽろと涙が……。
心療内科を受診してみませんか?ここには先進漢方精神外来があるので、そちらの先生をご紹介します」ということになったのです。
ご紹介いただいた恵紙 英昭先生は、緩和ケアチーム専任の先生でもあります。
とにかく、話を聴いて下さる。
恵紙先生とは、具体的な病気の話はあまりしません。本の話や、最近の出来後、それについてどう感じたか。そんな話をよくします。
そして、必ず「宇宙」の話に行き着きます。どうしてかというと、今起こっていること、今まで起こって来たこと、感じていること、いろんな人との出会い、ありとあらゆること全てが宇宙に繋がってる…。そのようなことをお話してると、今、自分の前に立ちはだかっている病を押しのける事すら出来ない事なんかも、何だかたいしたことではないような気がして来る。
でも、先日の受診の時はまた少しマイナーな思いが雲のように押し寄せて来ており……。
がんになると、それまでただ漠然と、遠くにあった「死」が、いきなり目の前に現れます。今日が、残された命の一日目だと考えた時、「あぁ、今日も何も出来なかった…」と思う。何かしなければと焦るばかりで何も出来ない。先の事、例えば子供達の。学校でのイベント事は……?将来、どんな仕事をするのだろう、どんな人と結婚するのかな……。私はその場にいる事が出来るのだろうか?
未来の予測が出来ない…………。
……自分の命が、刻一刻と、まるで砂時計の砂がさらさらと落ちて行ってるような感覚……
命の不確実さ、という事を考えると、誰もが同じなのだ。結局、「今」を生きるしかないのだから。
わかってます。わかってるから今を生きなければ、と思う。でも、時々、どうしようもなく息が苦しくなるほどの衝動にかられる時があるのです。
私はどうすればいいのでしょうか…?
ほらまた……。
どうしようもないような事を口走ってしまいました。先生は黙って聴いておられましたが、
「…でも、貴方はいろんなこと、小さな事にまで目を向けて、気付いて生きておられるでしょう?宇宙な出来後は、本当は、誰の身にも起きてる。ただ、それにみなさん気付かないんですょ。何となく一日を、ただ忙しく生きてると、いろんな事に気付かず、時は過ぎて行きます。でも、貴方はしっかりと見て、感じて生きておられますょ。」
そうか…。そうだょね…。
それでいいんだょね…。
焦るとろくなことはありません。
余計な事考えてると、それこそ素敵な事を見逃してしまうかも!
いかん、いかん!しっかりと前を向いて生きなければ。
恵紙先生、ありがとうございます。
またひとつ気付くことが出来ました。
ネガティブな私は取り消します!
一日一日を大切に生きます!